講演者
井上 正樹 助教(慶應義塾大学 理工学部 物理情報工学科)
講演日時
2016年9月4日(日) 9:00~10:00
講演場所
ラフォーレ那須
講演概要
大規模システムに対する制御理論のあり方について,講演者による最新の研究内容を中心にお話しする.近年の制御工学分野には,自然エネルギーの大量導入下での電力系統の設計という社会的課題から膨大な数の遺伝子や細胞のネットワークの解析といった科学的課題まで,大規模複雑系を解決できると多くの期待が寄せられている.扱いが難しいフィードバック系への知見や系統的な解析・設計法など,分野には多くの積み重ねがある.ただ,この中では大規模システムを想定したものは未だ充分であるとはいえない.詳細なモデルを構築し厳密に解析または最適に制御するという従来の考え方では限界があるためであろう.大規模システムを大自由度のモデルとして記述する限り,理論の展開や応用範囲も狭いものとなってしまう.本来,構成要素(サブシステム)の記述では,システム全体へ大きな影響を及ぼす本質部分さえ抽出できれば,その他の詳細なモデルは省くべきである.本講演では,サブシステムをモデル集合の元として記述することを提案する.モデル集合には消散性の特別なクラスを用いており,少数パラメータで特徴づけられる.このパラメータにより,特にシステムの安定性や他との接続可能性と定量的な外乱抑制性能など性質の一部を表現できる.そして,モデル集合に属するサブシステム二つからフィードバック系を構成する.このとき,系全体も同じモデル集合に属しており,性能パラメータの遷移のみでフィードバック接続を表現できることを示す.さらにサブシステムの接続規則をより一般のネットワーク接続に拡張し,同じように接続はパラメータ遷移で表現できること,そして,ある条件のもとでは接続の前後で外乱抑制性能が向上していることを示す.最後に,理論の展開として,次世代電力系統の設計方策を紹介する. 本講演の内容の一部は,計測自動制御学会 制御部門 制御理論部会が主催する制御理論合宿 2016における講演内容と同一のものを予定している.
    # なお,足立研夏合宿中のセミナーのため,関係者以外は聴講できません。
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