<<写真:ケンブリッジのわが家>>

「どのようなところにお住まいですか?」 と日本で聞かれたら,一戸建て,マンション,あるいはアパートと答えればよいが,英国でそのような質問をされた場合の答えには,つぎのようなものがある。

  • Flat:日本でいれば,マンション,あるいはアパートに当たるが,ヴィクトリア朝,ジョージ朝などといった昔ながらのフラットもたくさんある。
  • Semi-detached house:大きな1軒家を半分に分けた家のこと。
  • Detached house:いわゆる一戸建ての住宅。日本では一戸建ての住宅は多いが,ケンブリッジの街中ではほとんど見かけない。
  • Town house:1960年以降に建てられた新しい様式の建物。アパートのようなもの。ケンブリッジにはほとんどない。
ここまでが,「地球の暮らし方 イギリス 2003~2003版」にカラー写真つきで紹介されてい た家の分類である。しかしながら,写真に示したケンブリッジのわが家は,そのいずれの分類にも当てはまらず,最初のうちは人に聞かれたときに,どのように 説明したらよいかわからなかった。ようやく,つぎのような用語が適切であることを知った。
  • Terraced house:テラスハウス,連続住宅といい,隣同士壁で仕切られた連続住宅の1戸分。Terraced houseは英語で,米国では row house というそうだ。日本の長屋というとわかりやすいが,落語に出てくる長屋よりはちょっと高級な長屋だと思えばよい。
ケンブリッジの街にはこのテラスハウスがとても多い。
わが家と同じ構造の家が5軒つづいてテラスハウスを構成しており,わが家は5軒のちょうど真ん中に 位置している。ごらんのように家は3階建てで,1階(ground floor)はガレージと台所+食堂,トイレ,2階(first floor)は居間(sitting room)と主寝室とシャワールーム,そして3階(second floor)はベッドルームが3つとバスルームである。また,狭いながらも裏庭(backyard)もある。日本で暮らしている官舎とは比べ物にならない 広さであり,それ相当に家賃も高いが,ケンブリッジの街中の家としては比較的安いほうだと思っている。近所にあるヴィクトリア朝のテラスハウスの値段が 5000万円だと聞いたことがあるので,ケンブリッジの不動産の値段も日本同様にかなり高いことが想像できる。わが家はGrafton Centreという大きなショッピングセンターとMidsummer Commonというケム川ほとりの原っぱの間にあるため,立地条件もよい。知り合いの大学の先生が,たまたまケンブリッジ大学に滞在されていたので,その 方が帰国するに当たり,住んでいらっしゃった家を引き続き借りうけることができた。ケンブリッジに来る前に家を借りることができたので,われわれはとても ラッキーだった。また,この家は代々日本人が住むことが多かったらしく,家の中には茶碗,どんぶりなどをはじめとして,昭和40年代の炊飯器まで備えて あったので,非常に助かった。
英国の家と日本の家とはいろいろな違いがあるのだが,こちらに来る前に一番不思議だったことは,洗 濯物をどうするのだろうか? ということだった。日本では,洗濯物を屋外で干す光景が一般的だが,外国では景観を損なうため外に干してはいけないと聞いたことがあったからだ。家の中で 干してちゃんと乾くのだろうか,生乾きにならないだろうかなどと,主婦のような心配をしていた。もちろん,英国と日本とは湿度が違い,こちらは乾燥してい るので,家の中でも乾くだろうと思っていたのだが,洗濯物の乾燥のためのキーワードは「セントラルヒーティング」だった。

<< 2階にあるタンク室 >>

日本ではセントラルヒーティングのついた家に住んだことがなかったので,その仕組みに慣れるまで 少々時間がかかった。ケンブリッジのわが家には3階にガスボイラーがあり,屋根裏にある貯水タンクからの供給される水を温め,その温水を2階にあるタンク (plumberはcylinder(円筒)と呼んでいた。写真参照)に貯蔵する。そして,貯蔵された温水が各部屋にあるラジエターに供給され,部屋を暖 める。ラジエターにはバルブがついており,寒ければバルブを全開にすれよく,逆に暖房が不要であれば全閉にすればよい。また,タンクの温水は風呂やシャ ワー用にも使われる。英国では,ほぼ年間を通じてこのセントラルヒーティングを利用する。6月でも寒い日があり,そのようなときには各部屋のラジエターを 開いて,部屋を暖める。
逆に,一般家庭にはエアコンはない。よほど大きな病院とかデパートでないとエアコンを見たことがない。今年の夏は英国としては異常な暑さだったが, 35度を越す気温のときにエアコンがないと少々こたえた。
わが家の場合,1階にある洗濯機で洗濯したものを3階まで運び,浴室に洗濯物を干している。浴室に もラジエターがあるので,夜,洗濯して浴室に干しておけば,朝には8割がた乾いている。そして,ほとんど乾いたら,その洗濯物を2階のタンク室までもって いき,タンクの上部にある棚に置いておくと,半日もすればほんわかと暖まって洗濯物の出来上がりだ。外に洗濯物を干す必要は全くない。乾燥機もほとんど必 要ない。
5 月にこのタンクが水漏れしていることがわかり,タンク全部をplumber(水道屋)に取り替えてもらった。各部屋のラジエターから水を抜き,家全体の水 系統を一時断水にして,タンクを取り替えた。ほぼ1日かかる大工事だった。しかしながら,その後もラジエターの調子が悪くなり,1階と2階が全く暖まらな くなってしまったり,ガスボイラーの ON/OFF を切り替える機械式スイッチ(右の写真)がこわれてしまったりと,何度もplumberを電話で呼ばなけ ればならなかった。なお,写真の機械式スイッチは24時間時計で,赤い所になるとスイッチ ON,青い所になるとスイッチ OFF になるような仕組みになっている。たとえば,朝5時から9時まで暖房をON にし,その後はOFF にし,夕方の4時から夜の12時まで ON にしたければ,朝5時を赤,9時を青,午後4時を赤,夜12時を青に設定すればよい。最近は,機械式ではなく電子式に変わってきたそうだが,わが家のもの は相変わらず機械式であった。9月には洗濯機の脱水機能も壊れて,修理に来てもらった。とにかく英国ではいろいろなものが簡単に壊れる。
英国ではもちろんベッドなので,布団を干すという習慣もない。空気が乾燥しているので,日本の梅雨 のときのように布団がべとべとして気持ち悪いということはまったくない。しかし,燦燦と輝く太陽のもとで干してふっかふかになった布団で眠る楽しみを知ら ない英国人は,ちょっぴり不幸せだ。

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