慶應義塾大学 物理情報工学科に足立研究室が誕生して最初に配属された4年生とともに1年かけて行った洋書輪講が本日終了しました。

輪講した洋書は,

T.Glad and L.Ljung:Control Theory — Multivariable and Nonlinear Method –, Tailor & Francis (2000)

で,これは454ページの大著でした。

今年の足立研には大学院修士課程の学生がいなかったので,制御についての幅広い知識を英語で学習する目的で,私と4年生3名の計4名で,週に2回のペースで輪講を行いました。その結果,2名の学生がこの本を最後まで読みきることができました。内容をどれだけ理解したかどうかは別として,分厚い1冊の洋書を読みきるということは非常に意味のあることで,4年生たちはがんばりました。

この本について簡単にコメントしておきましょう。

[1] とにかくいろいろなことが書いてある,制御の辞書のような本です。また,数値例も豊富なので,理論を具体的な例題で確認しながら学習することができます。その反面,それぞれのテーマについてはそれほど詳しくは書かれていません。たとえば,モデル予測制御の章は8ページで終わっています。

[2] もともとスウェーデン語で書かれた教科書を英語に翻訳したものなので,文法ミスや意味不明の文章などが時々あり,残念ながら英語の水準は低いです。その最たるものは,ときどき意味不明なスウェーデン語が混じっています。Ljung 先生は,真剣に校正しなかったのでしょう。来年度は,ネイティブが書いた制御の教科書を輪講の教材にする予定です。

[3] 私がこの本を輪講の本として選んだ理由は,以下のとおりです。

  • 私が購入したときはペーパーバックで3870円と非常に安く(いまAmazonを見ると7000円近くしていますが),学生さんに購入を薦めやすかった。
  • Glad が過去に書いた Modeling of Dynamic Systems (1994),Ljung が書いた System Identification — Theory for the Users — (1999) など,この本の著者らの本には優れたものが多かったので,この本にも期待が大きかった。