今回はちょっと専門的な制御に関する研究内容についてです。
 3年生春学期で学習した古典制御理論は主に1入力1出力システムを対象としています。提案された1960年当時 「現代的な」 制御理論であった現代制御理論(状態空間法)では,多入力多出力システムを取り扱うことができますが,通常3入力3出力程度で,多くても6入力6出力くらいです。
 制御対象のモデルを求めるシステム同定でも,主に研究されてきたのは1入力1出力システム同定でした。状態空間モデルに基づく部分空間法が提案されてから多入力多出力システム同定も可能になってきましたが,それほど多くの適用事例は報告されていません。
 これにはいろいろな理由がありますが,その一つに多入力同定を行う場合の入力信号の生成法の難しさがありました。いま足立研究室ではNHK技術研究所と共同で,頭部伝達関数の同定を行っていますが,研究対象は多入力システムで,入力数は8から24くらいで,多いときには61入力を同時に用います。特に,互いに無相関な入力が望ましいのですが,なかなかその生成は難しいものがありました。

 今年3月に修士を修了した竹中君が一つのM系列信号から多数の無相関な信号を生成する方法を考えてくれ,論文にまとめてくれました。

  • 竹中裕司,足立修一:最小二乗法による多入力システム同定のための同定入力の生成法,計測自動制御学会論文集,Vol.47, No.6, pp.291 – 293 (2011.6)
  •  多入力多出力システムの典型的な例が「ネットワークシステム」でしょう。さまざまなネットワークが存在しますが,通信ネットワークや電力ネットワーク(電力グリッド)などはシステム制御理論のチャレンジングな研究対象です。