DSC03481 (1024x740)廣田幸嗣氏からエッセイ[23] を送っていただきました。

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風によって生じる波を波浪と言い,近傍の風による風浪と,ときに 1000 ㎞ 以上の遠方から伝わるうねりの2種類がある。風浪は大気の乱流と海面が相互作用する強非線形現象であり生成のメカニズムは複雑であるが,振幅の確率分布は単純なレイリー Rayleigh 分布でよく近似できる(ほぼ等しい振幅とランダムな位相差を持つ多数の波を加算すると合成波の振幅はレイリー分布になる)。

波浪は水の表面波なので,波力は単位幅当たりの仕事率(kW/m)でその大きさを表すことができる。波力の年平均は,偏西風が安定して吹いている北海周辺では数十 kW/m と高いが,日本沿岸はその半分以下である。しかし,日本は四方を海で囲まれており,波力発電の効率を上げればエネルギー源として非常に有望であると期待されている。

波力発電の父と呼ばれる故益田善雄は,1964年に航路標識ブイの電源として初めて実用化し,今では世界中の海で広く使われている。最近では,再生可能エネルギーの一つとして大型波力発電が注目され,世界中で実用化を競っているが,日本は英国を中心とした欧米に後れを取っている。最初は,Japan as No.1 であったものが,気がつくと Japan was No.1 になっていく例が多いが,波力発電も残念ながら同類である。

理由として R&D 予算の不足を指摘する人もいるが,真因は研究者の不足であろう。日本は広い領海を持っているにもかかわらず,造船工学や海洋工学を学べる大学が少ない。国家戦略の欠如と言っても過言ではないだろう。

マリンレジャーに興じる若者で賑わう湘南の海,この中の1%でも海洋開発に関心を持って欲しいと願っている。

波力仕事率のグローバル分布 (NEDO 再生可能エネルギー技術白書より)

波力仕事率のグローバル分布
(NEDO 再生可能エネルギー技術白書より)