L1000010 (768x1024)廣田幸嗣氏からエッセイ[29] を送っていただきました。

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デジタル情報伝送の高速化が進むにつれて,伝送路にある寄生容量 C や寄生インダクタンス L の影響で信号波形が乱れ,相互干渉が起こりやすくなり,正しくデータを伝えられないケースが多くなる。SI(Signal Integrity,信号品質)が重要なテーマとなってきた。ご承知のようにデジタル信号は 1 と 0 のみを扱うが,1 から 0 へ,0 から 1 へと高速で遷移するには,時間軸だけでなく周波数軸上で現象を捉える,高周波アナログ技術の出番となる。

また近年の半導体 LSI の低電圧・高電流化により、電源・グランド間のノイズも増えて,PI(Power Integrity)を確保するために,電源回路も高周波回路として扱うようになった。要するに最新のデジタル情報伝送は,一昔前の高周波技術に支えられている。

高周波技術は,電力伝送でも重要な役割を果たす。電力は高速デジタル回路と較べると,電力信号が変化する時間= dt は緩やかであるが,変化する電流= dI が大きい。また図体が大きいために寄生容量 C や寄生インダクタンス L も大きくなる。このため,たとえば逆起電力=LdI/dt は,高周波回路と同様に無視できなくなる。

身近な例として,東海道新幹線のレールを考えてみよう。レールは鋼材で,架線の硬銅よりも抵抗率が 6 倍程度大きいが,断面積は 40 倍も大きいのでレールは電気を良く通すように見える。しかし,交流がレール内を流れると内部の磁場が変化し,レールの中心部は逆起電力が大きいため電流が流れにくくなる。電流は,磁場が弱いレール表面部を流れる。

東海道新幹線の交流は 60Hz で,表面から深さ≒ 2 mm までしか電流が流れず抵抗が増大する。実験と計算より,新幹線では約半分の電流が大地に漏れ出して沿線に妨害を与えることが分かった。1964 年の開業時には,約4km おきに架線とレールを切り離し,吸い上げ変圧 BT:Booster Transformer を中間に入れた。変圧器の作用で,架線電流とレール電流を強制的に 1:1 として,漏れ電流レールに回収した。

このように電力回路では,高周波領域で見られる表皮効果と呼ぶ現象が,相当低い周波数で問題になるのである。銅の表皮深さは 60Hz で9mm 程度あって,銅箔の厚みが 18μm のプリント基板ではまったく無視できる。60MHz 以上の高周波領域では 9μm 以下となるので,高速デジタル回路では表皮効果の知識が必要になる。

高速デジタル伝送システムや,パワーエレクトロニクスシステムが自動車に多数搭載されるようになり,Systems Integrator としても高周波技術が重要になる。

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