2014年3月に慶大物理情報工学科を卒業した古賀朱門君(現在 University of California, San Diego)からサンディエゴだよりが届きました。

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アメリカの年度(academic year)は、9月に始まり6月に終わります。
UC San Diego へ留学して既に1年2ヶ月弱が経ちました! アメリカの PhD(博士)課程は、日本でいう修士と博士のセットのようなもので、全体を通して約5年ほど卒業までにかかります。最初は5年もかかるなんてすごく長いと思ってたのですが、この1年ちょっとがあっという間だったのを考えると、意外と短いものなのかな、とも今は思っています。

さて、春学期以来久しぶりの寄稿です。今年の4月から始まった春学期が、6月上旬に終わりました。それから9月の次年度が始まるまでの3ヶ月間半が夏休み。この夏休みの期間は、実家に帰って家族と過ごす人もいれば、夏休みにある任意の特別授業を取る人も、また企業でインターンをする人もいます。

だが、PhD の学生の多くは、夏休みも研究室で研究生活に浸ります。アメリカの PhD 学生は、その大半が学費(年間約4万ドル)+給料(月約2千ドル)を支給されながら生活しています。それらのお金は、研究室で研究をして働く RA (Research Assistantship) や、担当授業の採点や補助をする TA (Teaching Assistantship)、また大学が補助してくれる Fellowship などによって賄われています。つまり、RA で給料をもらっている人は夏休みも研究室で働かなければならないし、また TA やFellowship は大抵一時的なものなので将来 RA をもらうために夏の間も研究成果を出しておいた方が好ましいのです。

僕も夏休みはずっと研究漬けの毎日でした。1年目から始めていた研究内容が形になってきていたので、それを続け、9月末に締め切りであった American Control Conferrence(ACC2016)という学会に提出しました。アクセプトされれば来年の7月にボストンです。といった形で、特に旅行にも行かず夏休みが終わり、もう PhD 2年目がスタートしてしまいました。時間の流れが不思議なほど早い!

そういえば、春学期に履修した授業の紹介がまだでしたね。秋・冬学期の履修授業は前回の寄稿をご覧下さい。

~~Spring Quarter(4~6月)~~

Nonlinear Control (Prof. Jorge Cortez)
Winter Quarterに履修した Nonlinear System TheoryとLinear Control Design を基礎として、非線形システムに対する制御設計法を扱う。非線形システムに対し適当な制御入力を与え線形システムを構築するフィードバック線形化、その計算法としてのLie 微分や Lie ブラケット、また非線形システムの可制御・可観測、制御リアプノフ関数などを学びました。成績は毎週の宿題と、中間・期末テストによる。web ページで教材レジュメと宿題が見られます。

Optimal Control (Prof. William McEneaney)
ある評価関数を最小化する制御入力を求める最適制御理論として、主に Dynamic Programming(動的計画法)を学ぶ。離散時間確率システムと連続時間確定システムを扱い、前者では確率の基礎からマルコフチェインまで、後者では価値関数(評価関数の最小値)の満たす Hamilton Jacobi Bellman 偏微分方程式からその数値解法なども学びました。例題としてギャンブルゲームが出たり、また先生がかつて NASA/JPL で働いていた経緯もあってか軌道設計などの応用例の話もしてくれました。中間・期末試験はなく、宿題のみで成績がつけれられる。web ページで宿題の問題が見られます。

Real Analysis for Applications (Prof. William McEneaney)
解析学の一つである実解析として、測度論やルベーグ積分、また関数空間(計量ベクトル空間・内積空間・ヒルベルト空間・バナッハ空間・Lp 空間・ソボレフ空間などなど)を学びました。Optimal Control と同じ先生で、試験はなく宿題のみで成績がつけられました。web ページで宿題の問題が見れます。

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