小野雅裕さん(NASA JPL,元慶大物情足立研)が久しぶりに足立研セミナーで講演してくれました。

講演題目は「NASA太陽系探査の最前線と,制御・人工知能が果たす役割」でした。

人気者の小野さんのファンはたくさんおり,会場には60名以上の聴衆が集まりました。
女子中学生,塾内高校生,他大学の学生,そして企業の方(放送関係者もいらっしゃいました)などさまざまな方が参加されました。

足立研関係者としては,京都大学の丸田さん,共同研究をしているJAXAの成岡さんと佐藤さんも参加してくださり,私としてもいろいろな人とお会いできた楽しいセミナーでした。

中学生から大学院生,教員までスペクトルが広い聴衆を前に,小野さんはわかりやすく宇宙探査機の開発などについてお話ししてくださいました。

以下は,小野さんのトークで私が理解したことと,感想です。

宇宙開発はハイテクだと思われていますが,宇宙探査機に搭載されているコンピュータは10年以上前の性能のものです。これは昔もいまも変わらないようです。

たとえば,火星ローバは10年以上前から自動運転をしていますが,それは自動運転と手動運転を組み合わせたものであり,どちらかというと手動運転に頼ったものだそうです。信頼性を考えると,すべてを自動運転に頼ることは危険だという側面があります。これは,いま地上の車で議論されている自動運転と同じ問題です。われわれが研究している自動制御(automatic control)がもつ根源的な問題の一つです。

このように宇宙探査機は自動化を避けて開発されてきた部分があったのですが,そのようなスタンスで探査できるところはほとんどやりつくしたというのが現状だそうです。もっと難しい場所を探査したいというニーズのもとで deep learning に代表されるAIの活用を検討している,という流れは自然であり,納得しました。

いま地上で研究開発されている自動運転において,この論点はどのように考えられているのだろうか,と感じました。

もしかしたら,私の間違った認識のところもあるかもしれませんが,AIを利用したり,研究する上で重要な知見だと思いました。