宇都宮大学足立研 OB の佐野 久さん(Senior Chief Engineer of Honda R&D Americas)からオハイオ通信 [11] が届きました。

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オハイオ通信[4]で、筆者が50の手習いで始めたゴルフのことを紹介した。今回のオハイオ通信は、もう一つ50の手習いで始めたピアノを紹介しよう。

ピアノは小学校低学年まで習っていたが、練習がいやで黄色のバイエルの途中で挫折した。

一方、退職後の趣味として、スポーツに加え音楽や美術等の芸術の趣味を持っておくのが良いと言われている。

アメリカに赴任して、コロンバス市内のピアノ店を訪れてみると、New York製スタインウェイの70歳のグランドピアノ (Baby Grand Piano Model S)を見つけた。鍵盤を叩くと音色がすごく美しいことに驚いた。しかも鍵盤は象牙である。本業はクルマの音響・振動の専門家だったので、店にあるヤマハやカワイの音色と客観的に比較、すると美しさが違う。しかも日本に比べて圧倒的に安く、我が社のクルマで言えばシビックと同価格。

ゆっくりした曲を弾くならこのピアノしかない、と即購入。美しい音色に癒やされるので、練習が苦にならない。また、マホガニーのため置いておくだけでも美しい。

しかし、日本にいる妻のひんしゅくを買った。運転が下手な人でもフェラーリやポルシェを所有しているのと同じだ、と説得したが納得してもらえていない。

曲目は自分が弾きたいと思ったものを選び、一年かけて一曲弾けるようになることを目標にした。また、毎年なるべく違う作曲家の曲を選ぶことにした。以下、弾けるようになった曲を時系列に並べてみる。ただし、弾けるというのは、暗譜して最後まで引き切ったという意味であり、ひとさまに聞いていただくレベルではないことを付け加えておく。

 1. ベートーベン:ピアノソナタ悲愴第二楽章
 2. ベートーベン:エリーゼのために 
 3. ショパン:ピアノワルツ Op69, No.2
 4. ショパン:ノクターン Op9, No.2
 5. シューマン:子どもの情景 見知らぬ国の人々
 6. リスト:愛の夢第三番
 7. バッハ:平均律アヴェマリア
 8. モーツァルト:トルコ行進曲
 9. バダジェフスカ:乙女の祈り
 10. ショパン:ワルツ KKIVb No.11
 11. シューベルト:軍隊行進曲

この中では、リストの「愛の夢第三番」が一番のお気に入りである。なんとも美しいメロディーで、毎日弾いていても飽きない。

スタインウェイのピアノが、下手であっても音を楽しめるということを教えてくれた。美しい音色は心を豊かにしてくれる。スタインウェイとの出会いに感謝している。