講演者
郷田直輝教授(国立天文台 JASMINE 検討室)
講演日時
2013年4月22日(月) 16:30~18:00
講演場所
創想館2階 セミナールーム3 (14-203)
講演概要
     我々が住む太陽系は、天の川銀河とよばれる、恒星が約2000億個も集まった星の集団の中にある。このような天の川銀河と同様な銀河は、観測できる範囲だけでもこの宇宙には約1000億個存在しているといわれている。さて、我々が住む天の川銀河であるが、そのサイズや形状、星の軌道などはまだ完全に分かっていない。さらに、天の川銀河の誕生やその形状などの進化も未解明である。さらに、天の川銀河に含まれるダークマターの分布や軌道も分かっていない。天の川銀河は多数の銀河の中の一つに過ぎないが、我々はその中に存在し、一番身近であるので、近未来に詳細かつ精密に研究ができる大変好都合な“実験場”でもある。天の川銀河を知ることで,他の銀河の解明にもつながると期待される。さらに、天の川銀河内では、この宇宙に存在する様々な天体や天体現象を観測することができる。したがって、天の川銀河内を探ることにより、こういった天体や天体現象を詳細、精密に知ることもできる。
     このように天の川銀河を研究することは重要であるが、では、天の川銀河を“知る”ためにはどうすれば良いのだろうか? 解明のための重要な物理情報として、星の3次元分布(立体地図)と星の3次元的運動があげられる。この天文学の基本情報が分かれば、非常に多様なことが分かってくる。では、どうやって、星の立体地図や3次元運動がわかるのかといえば、実は、天球上での星の位置とその時間変化から読み解くことができる。ただし、星は十分遠くにあるため、位置変化は非常に小さい。そこで、いかに高精度で星の位置とその動きを測定するかが重要な鍵となる。その方法の研究や観測を実際に行うのが、位置天文学とよばれる天文学の一分野である。本講演では、位置天文学の概要、重要性、観測の歴史と現状、そして今後の観測衛星計画について説明する。特に、我々が中心となって進めている赤外線位置天文観測衛星(JASMINE)計画シリーズについて詳しく紹介する。
     ところで、高精度な位置測定のためには、もちろん、観測装置や衛星システムに関する技術的レベルの高さをある程度要求するが、もう一つ大きな鍵となるのは、データ解析の工夫である。誤差を如何に小さくして、より“正しい”物理的情報を取得できるか、その統計学的方法論が重要である。我々は、観測データ自体から系統誤差を推定しつつ、星の位置とその変動を高精度で推定していく方法を考えているが、その方法の紹介と課題について言及し、議論や今後のご協力もお願いしたいと考えている。
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