講演者
石上玄也 博士(JAXA 宇宙科学研究所)
講演日時
2013年1月11日(金) 10:45~12:15
講演場所
厚生棟3階 大会議室
講演概要
月や惑星を探査する手法は,探査衛星によるフライバイや周回軌道上からの観測,探査機をある特定の地点に着陸させてピンポイントでの探査を行う方法,あるいは,移動ロボット(Rover/ロ-バ)を用いることによって特定の地域まで移動し,その場(in-situ)探査を行う方法に大別される.特に,移動ロボットを用いた探査は,着陸システムの着陸精度(数百メートルから数十キロメートル程度)を補償し,より科学的価値があると期待できる地点へ移動することが可能である.そのため,高精度・高分解能に狙いを定めた探査ミッションでは,ローバは有用なサイエンスツールとして期待されている.これまでの宇宙探査の歴史において,ローバによる移動探査の成功例はわすが6機であり,これはローバの技術的ハードルの高さを示唆するものである.ローバの技術的課題の例としては,砂や岩石に覆われた不整地を広範囲にわたって走破することや,オペレーションのプロファイルによって電力収支が大きく変わってしまうこと,未知環境を走行するための高い自律性能などが挙げられる.これらはいずれも宇宙空間を航行する探査機とは一線を画すものである.これら課題を解決しつつ,限られたリソース(通信や電力)や,限られたサイズ(ロケットや着陸システムに収まるサイズ)を考慮し,より優れたローバを作り上げていくことが,ローバを開発するうえでの最も難しい点だと言える.本セミナでは,ローバ探査の概要を紹介するとともに,特にロボットシステムとしての視点から見たローバの技術的課題,および研究開発動向について紹介する.
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